ローン返済1年目にして後悔させられた本。『五感で紐解く設計手法』無料プレゼント中

「読まなければよかった……」
その記事を読んだとき、私はまず、そう思った。

私はベガハウスという工務店に、広報として務めている。

36歳、4度目の転職。

ある種の覚悟を持って、今の職場で働き始めて、もうすぐ1年になる。工務店に務めてはいるが、住宅建築の知識はない。前職は地方の小さな広告代理店だった。そこで少し心が弱り、退職した。気持ちが沈み、家族と話すこともしんどい。そんな状態だったが、現職の社長は快く私を受け入れてくれた。

入社から半年が経ち、仕事にもなれてきた頃、その社長が言った。

「自分の家づくりへの考えを、1冊にまとめたいんだけど」

社長はメールマガジンを配信している。
できるだけ毎日、コツコツ続けている。
これまで370棟以上に携わってきた実績をもとに、家づくりのポイントを分かりやすくまとめている。

その中で、家づくりの核に触れる部分について書いた1週間があった。それが、すこぶる反応が良かったらしい。SNSを通じて、同業他社のみならず一般の方からも反響があったようだ。そのメールマガジンの記事を1冊にまとめたいという。

記事を再編集するにあたり、私はまず、すべての記事に目を通すことから始めた。
全部で6章あるうちの、1章目を読む。

「おや?」

そのままの勢いで2章目に進んだ。

「……まずい」

背筋がゾクゾクした。

良い記事だった。
ただ、良い記事だったことで、私は大きな失敗をしたんじゃないか? という不安に襲われることになった。

私はつい9カ月前に、新築の一軒家を建てたばかりだったのだ。
ベガハウスとは別の、ハウスメーカーで……。

「家は自分の手で、住みながらカスタマイズすればいい」

そう思って、“ただの箱”に近い、シンプルな平屋を建ててもらった。

ハウスダストにアレルギーがあったので、我が子のことも考えて、建築資材は健康に配慮したものを。こだわったのはそれくらい。後悔はないし、担当してくれた営業さんにも、ハウスメーカーにも感謝していた。

……のだが。

記事をリライト(書き直し)していくごとに、私は“家づくり”の魅力にのめり込んだ。

例えば家の「性能」について。

“欠陥住宅”という言葉がニュースを賑わせ、大きな震災が日本各地で起きたことで、「住宅=性能が大事」という認識が広く根付いた。私もその1人で、家づくりの最中には「耐震性、気密・断熱性」という言葉が頭の中をぐるぐる回っていた。

けれど、本にはこう書かれている。

「性能は、“心地よさ”を図る一要素にすぎない」と。

よく考えれば確かにそうだ。地震に強いからといって、冷たいコンクリの箱に住みたいとは思わない。さらに本はこう続いている。

「私は設計者として、もっとも原始的な感覚である『五感』こそを大切にしている」

これに関しては実際に読んでもらったほうが話が早いので割愛する。
しかし、すべてが新鮮で、納得のいく話ばかりだった。

リライトを進めながら、私は悦に入っていた。
古今東西の希少な食材を目の前に並べられた料理人の気分だった。どう調理してやろうか? 煮る? 焼く? それとも蒸す?

確認していないが、パソコンに向かう私は笑っていたと思う。

リライトを終えた夜、会社の食堂でコーヒーを飲みながら、思った。

「“餅は餅屋”とはよく言ったものだ」

「自分の家は、自分の希望どおり建てたい」と私は思っていた。実際そうしてもらった。すると、住みながら「ここはこうしたほうが良かったかも」という部分が出てくる。当然だ、私は素人なのだから。

筋の通った設計者と大工にお願いすれば、自分で考えるよりも“自分らしい”家が建つのだ。

なぜそんな当然のことに気づかなかったのか。
絶対に考えてはいけない欲望が頭をもたげる。

「この人なら私の家を、どう設計するのだろう」

それからひと月ほど経った、先日のこと。大学時代の友人と話す中で、家づくりの話になった。お互い30半ば。古い言い方をすれば、そろそろ“自分の城”をと、自然と思考がそちらに向かうのかもしれない。興味のあるハウスメーカーの社名を次々に挙げる友人に、私は言った。

「まずはこの本を読んでくれ。電子版だけど、集中すれば1時間くらいで読み終わるはずだから。きっと、家づくりのイメージ変わるよ」

私は人に何かを勧めるのが苦手だ。そもそも自分に自信がないから、自分を取り巻くものにも自信を持てない。けれど、このときばかりは違った。これは伝えなければならない。頬と耳を真っ赤にして喋った。

「必ず読むよ。ありがとう」

数日後、友人から本の感想と、「今度、お前の会社に行く」というメッセージが届いた。仕事でこんなに嬉しかったのは、何年ぶりだろう、と思った。

その頃には、私の欲望も少し形を変えていた。おっかなびっくり、妻に話してみたのだ。すると意外な答えが帰ってきた。

「子どもが外に出て私たちも仕事をやめたら、海辺に小さな家を建てよう。設計は、社長さんにお願いして」

それが私の新しい夢になった。

友人を動かし、私の新しい夢をつくった本『五感で紐解く設計手法』は、これから家づくりを考える人にとっての必読書だ。

「無料で配布したい」

という社長の反対を押し切って、試しに電子書籍販売サイト「Kindle」で販売してみた。たちまち、新着ランキングで1位を獲得した。やはり皆が求めている情報なのだと確信した。

それからは社長の意向に則り、メールアドレス登録者に無料で配布している。

この本を、家づくりを考えている多くの人に届けられること、本当に嬉しく思います。
最初に私が感じた「不安」ではなく、後に私が得た「夢」として、皆さんのお手元に届きますように。

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