住まいの手引き

新築を建てるなら収納はどれくらい? “最適量”の考え方と、大容量に頼らない暮らし方

新築住宅を考えるとき、多くの人がこだわるのが収納。特に、収納量をボリュームアップさせる傾向があります。しかし、実際に持ち家に感じる不満をリサーチすると、その第1位が「収納の少なさ」だと言われています。

建てる前に検討したにも関わらず、なぜそんなことが起こるのでしょうか? そこで今回は、弊社代表で一級建築士の大迫に「収納の設計の失敗しがちなポイントと、ベストな収納を手に入れる考え方」について聞いてみました。

〈ベガハウス代表・大迫プロフィール〉
1974年鹿児島県鹿児島市生まれ。1995年北九州ポリテクカレッジ卒業。ゼネコン現場監督3年、設計事務所3年を経て、ベガハウス入社。2019年代表取締役社長就任。一級建築士、一級施工管理技士。近著に「暮らしを建てる〜ベガハウスの家づくり〜」

本ブログでは、設計士として多くの家づくりを手がけた経験からたどり着いた「収納の最適量」をはじめ、「ベストな収納方法」「収納力がアップする考え方」など、すっきりとした家で暮らすためのポイントをご紹介します。

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注文住宅で重要な【窓の配置】 暮らしを豊かにする窓、いらない窓とは?

家づくりを始めるとき、間取りやデザイン、機能性などに意識が向きがちですが、注文住宅ではそれと同じくらい「窓」の配置も大切にしたいポイントです。

ひと口に窓と言っても、どういう窓がいい窓なのか?あらためて考えてみると、性能以外はいまいちピンと来ない方も少なくないはず。

実は、窓の役割や配置する際の注意点を知らずに家づくりを進めると、“いらない窓”を設けてしまってコスト高になりかねません。今回は暮らしを豊かにする窓と、そうでない窓の違いを解説します。

窓の設計で気をつけたい7つのポイント

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造園にはコツがある? 知っておきたい庭づくりの基本とポイントをご紹介します!

新築を建てるとき、最初から造園までをきちんと視野に入れて考える方は、そう多くありません。しかし、四季を感じられる庭は、暮らしにスパイスを与えてくれる、家には欠かせない大切な要素です。ということで、今回の記事では、造園の基本的な考え方や、豊かな庭づくりのポイントなどをご紹介しましょう。

そもそも造園とはどのようなもの? 庭づくりの基本的な考え方とは?

造園とは、庭をつくることを指します。ただ植物を植えるだけでなく、庭の空間をつくりあげることを意味します。家を建てるときには、建築基準法という法律に基づいて設計しますが、庭づくりにおいては法律的な制限はありません。言うならば勝手にできるものです。

しかし、実際にはご近所の方々の目にも触れますし、知らずに成長スピードがはやい木を植えてうっかりお隣の敷地にまで伸びてしまうと、トラブルの原因にもなりかねません。そこで、造園には「半公共」という意識をもっておくことが大切です。まずは、自分たちも近所の人たちにとっても心地よい庭をつくる、という気持ちが根底にあるといいですね。

お手入れできるキャパシティを超えない庭づくりのススメ

美しい庭をキープするには草刈りなどのメンテナンスが必須です。だからこそ、メンテナンスが可能な範囲の庭づくりが前提になります。

とはいえ、植栽がゼロではさみしいので、ポイントはちょっとがんばればメンテナンスができる庭です。荒れ果ててしまっては半公共という意味ではNGですし、逆に後々の手入れが大変になってしまいます。ですので、自分たちの手でメンテナンスできる造園を目指しましょう。

家づくりの一部としての庭づくりとは?

新築の家を建てるとなった際、間取りや家事動線、機能性、デザインに意識が向きがちですが、どういう暮らしをしていきたいかと考えれば、庭づくりも同じくらい大切です。「家の窓からこういう植栽が見えるといい」「家に帰ってくるときに、玄関までの間に季節の香りを感じられる金木犀があるといい」など、具体的にイメージして造園するといいでしょう。

例えば、梅の木を植えたら実がなります。その梅を梅酒にしたり、梅シロップにしたりすることができます。これはベガハウスでは“時をためる”という考え方をしていますが、庭の梅の木が暮らしに豊かさをもたらし、彩りを添えてくれます。家づくりの一部として庭づくりをすると、その後の暮らしに思いもよらぬ喜びを与えてくれることがあります。

思いもよらぬ喜びは、自然だからこそなせる業と言っても過言ではありません。続いて、庭がもたらす“いいこと”についてご紹介します。

計算できないからこそ、自然は思わぬ喜びを与えてくれる

そもそも家は計算ずくで建てられるもの。太陽が出てくる位置や沈む場所も把握できますし、構造、温熱も計算できます。けれども植栽は、ある程度は木の種類によってどこにどれを植えると育ちやすいのかはわかりますが、すべてをコントロールできるわけではありません。

だからこそ、予想以上につぼみがついて花が咲き乱れたり、巣箱を置いたら美しい小鳥が集まってきたり、自然はすべてを計算できないゆえに思いもよらぬ喜びがやってくることがあります。それに、家のなかから緑が見えたり、外から帰ってくるときに草木があったりして、ふと自然を眺められる暮らしは心に余裕が出てくる。かわいい昆虫が来たり、鳥が来たり、コントロールできないからこそやってくる“いいこと”も楽しめます。

植物を育てるのが苦手な人でも庭づくりは可能?

植物は好きだけれど、育てることに苦手意識をもっている人も少なくありません。なかには、「植栽はいりません!」とおっしゃるお施主さまも…。しかし、ベガハウスでは造園をして一年後に「やっぱり植栽はいりません」という方は、これまでゼロ! どの方も庭に緑があって少しずつお世話をしていくと自然に緑が好きになるそうです。

おそらくこれまでの暮らしに緑が身近になかったことで苦手意識をもたれていただけで、身近に植物があれば、人は緑を愛でるようになる。もちろん少しのがんばりでメンテナンスができる範囲ということがポイントにはなりますが、人は自然とつながっていたいと本能的に感じているのかもしれませんね。

成功する造園、失敗する造園の違いや、いい庭づくりをする鍵は?

庭づくりに成功や失敗というのはありません。どんな庭にもよくも悪くも、虫は来ます(笑)

ただ、異常発生的に虫がつくのは植物が弱っているのが原因であることが多い。その場合は植物を元気にしてあげるように手入れをすればOKです。住宅地には不向きの植物というのはあります。例えば、どんぐりの木。とても成長が早いので住宅地では手入れが難しいことや、台風などで枝が折れたり、倒れたりしてお隣の家にも迷惑がかかる可能性があるためおすすめしません。

また、素敵な庭に仕上げるためには原風景に近いものを再現しましょう。というのも、敷地は人間が勝手に引いた線ですので、草木にやってくる虫や鳥には関係がありません。だからこそ、周囲の自然と住宅地のつながりを尊重して植栽をするといい効果が生まれます。

例えば、遠くに桜の木があって、家の庭にも桜の木があるとすると、窓から見渡したときに遠近感が生まれる。そうすると狭い家でも広く見える効果がありますし、庭にも立体感が出てきます。それから、植栽も遠近感が必要なので、お隣や少し遠くの公園などに季節を感じられる山並みや風景があれば、それをお借りして、敷地内の庭づくりにも活かす。借景という方法もイチオシです。

あとは、絵になるようにつくる窓、ピクチャーウィンドウという手法を使うのも◎。土地のいいところは取り込んで、あまり日常的に目にしたくないところはきちんとシャットアウトし、その場の力を最大限に活用したり、土地の魅力を発見したりする造園が“いい庭”の鍵となります。

住い手にとって豊かな庭をつくるためのコツ!

まずは、好きな花、好きな木、苦手な花、嫌いな植物の香りなどについて、家族で話し合いましょう。金木犀の香りひとつとっても好きな人とそうでない人がいますよね。ですので、まずは家族で話し合って、その内容を設計士さんに伝えます。そうすると設計士さんがご家族の要望を取りまとめて造園の計画を立ててくれます。

さらに、街を歩いていて「こんな緑がいいな」「この家の庭が素敵だな」というものがあれば、差し支えない場所であれば写真に撮って設計士さんにそれを見せるだけでも◎。もちろん生きものなので、できることとできないことがありますが、好みを伝えるのは大事です。

庭ができてからは毎日、植物を見てあげることが豊かな庭づくりのコツ。管理するという意味ではなく、毎日愛でていることで小さな気づきや発見があって求めずとも豊かさを感じられるようになってくるはずです。もちろん感じ方は人によって異なるものですが、それを家族で話したり、共有したりすることで暮らしの余白を楽しむための庭になってくれるでしょう。植物と縁がなかった人でも、庭を見る、眺めるから、いつしか“愛でる”になっていくのも自然のおもしろさでもありますね。

家の前の広い庭と、L字やコの字の家の中庭、植栽の手法はどう違う?

L字やコの字の家は、家の2方向から見えたり、3方向から見えたりします。かたや広い庭は家のなかの一方しか見えません。植物の葉は太陽が出てくる方を向くので、まずは植物が美しく見える見え方には気をつけましょう。

植える敷地は器ですので、そこにどういう風に植えるかというのが基本になります。大きい器と、小さいもっこりした器では、映える植栽の高さも違いますし、遠近感の演出も異なります。

それから広い庭では土地に高低差をつけて、庭が立体的に見えるようにするのもおすすめです。家から見える庭の一番遠い部分をもっこりさせると、地面に高さが出る分、見える緑の量が増え、平坦だと見える緑の量が減ります。そういった工夫で見え方を変えるのもテクニックのひとつです。

南国・鹿児島ならではの造園とは?

とても暑い、鹿児島の夏。エアコンで乗り切るのもいいですが、エアコンを最小限に抑えて外の風を取り込みたいという方もいらっしゃいます。実は、普通に窓から風が家に入ってくるのと、植物を通った風が入ってくるのとでは、温度が違うんですね。植物を通った風のほうが温度はグッと下がり、涼しく感じます。

そういった意味で、植物は管理する大変さもありますが、暑い鹿児島ではコンクリートを敷き詰めた土間より緑がいっぱいの庭があるほうが快適。それに庭に水を撒いて蒸発するときのにおいも楽しめます。

ズバリ! 造園の予算はいくら?

「ズバリ!」とは書いたものの、正直なところ、ズバッと言えないのが予算です。庭のつくりや植栽の数や種類で変わるので、あくまでも目安とお考えください。

約50坪の土地に住宅+造園を考える場合、予算は最低でも100万円はみておくといいでしょう。あまり庭を重視しない場合であれば、30万円ほどで庭づくりができるハウスメーカーもあります。

ひとくちに造園といっても家のまわりの環境や、住まい手が理想とするライフスタイルによってベストな庭づくりにも大きく違ってきます。まずは家族で話し合って、それを設計士さんに伝える。そして、庭ができあがってからが本当の庭づくりのスタートですね。ぜひあなたの暮らしを彩る、素敵な造園ができますように。

旅する家具デザイナー・村澤一晃氏はどんな人? プロフィールから代表作までまるっと解説します。

新たに注文住宅を建てたり、建売住宅を購入したり。新築に住むことを想像したとき、せっかくなら「こだわりの家具に新調したい!」と思いませんか?しかし、ひとくちに「こだわりの家具」と言っても、“家と調和して、家族のライフスタイルに最適で、使い勝手がよく、ストーリーが感じられる素敵な家具ってどうすれば出合えるの?”という人も多いのでは?

そこでご紹介したいのが家具デザイナーの村澤一晃氏。彼の代名詞とも言えるのが「股旅社中」という取り組みです。「股旅社中」では全国各地の職人さんと、その土地ならではの素材を使ってオリジナルの家具を制作しています。今回の記事は、そんな村澤氏のプロフィールから、これまでの活動、代表作などをまるっとまとめてお届けします!

家具デザイナー・村澤一晃氏のプロフィールをご紹介!

一体どのようにして家具デザイナーになるのか、それを生業とするに至るまでにはどのような道のりなのか、いまいちピンと来ませんよね? それでは村澤一晃氏のプロフィールをご紹介しましょう。

<村澤一晃氏プロフィール>

1965年、東京生まれ。家具やインテリア、建築のデザインや製作、施工技術を学べるデザイン専門学校・ICSカレッジオブアーツを卒業。垂見健三デザイン事務所を経て、1989年イタリアに留学する。1990年よりミラノにあるセルジオ・カラトローニデザイン建築事務所に勤務。家具のデザインのほか、インテリアデザインや展示会場の構成を手がけていた。

1994年、ムラサワデザインを開設。「現場での開発」を開発理念とし、また、「デザインは生活や行動のすべての中にある」を信条としてデスクで図面を描くのがデザインではないことを実践。国内外の工場を歩き回り、道を歩くときや飛行機で移動するとき、稼働する工場を見つめるとき、誰かとする会話の中などからデザインを紡ぎ出し、地域の特性を活かした家具の開発を中心に活動している。

村澤一晃氏のものづくりとは? 代表作「pepe」とはどんな作品?

pepe サイドチェア(スタッフ私物)

村澤氏のデザインの手法は一貫しています。デザインで求める目標やテーマを、関係する人々で共有。そして現場で手を動かして、現場でデザインを一緒に検証しながら目指すデザインを紡ぎ出していく、という手法です。村澤氏はそれを「ワークショップ方式のデザイン開発」と呼んでいます。

村澤氏の代表作と言えば、アームチェア<pepe(ペペ)>。2004年11月に発表され、2005年にはグッドデザイン賞を受賞した作品でもあります。<pepe>はイタリア語で“コショウ”という意味。

椅子の足先は丸い断面、アーム部分は丸四角、さらに背の先端部分になると再び丸になるというアームの形状にピリッとスパイスの効いた作品です。背もたれの部分はアーチ状になっており、もちろん座り心地も抜群。木材やファブリックをセレクトすることもできます。

村澤一晃氏が取り組む「股旅社中」とは?

村澤氏の代名詞とも言えるのが「股旅社中」というプロジェクト。工務店や住まいに関するメーカーが協働し、新しい家づくりに取り組む活動をしています。

家に住まう人と建築空間の接点となる家具や建具、さまざまな建築部品。これらについて既製品や従来の手法で満足できるものがなかった場合、“じゃあ、オリジナルの製品を開発しよう!”という前向きなデザイン実践活動を行うのが「股旅社中」です。

「股旅社中」が目指すのは、手触りのいい家、住めば住むほど心地よくなる家、隅々までていねいにデザインする家。生涯に渡ってきめ細かなアフターメンテナンスを手がける工務店ならではの家づくりの、さらなるレベルアップをともに探求しています。

また、これまでにないものを求めて、同じ志をもつ仲間と互いに研鑽し合いながら交流を深めており、開発力の向上、時間とコストの合理化、情報とノウハウの共有、人材育成などもチームの活動に活かしていく、というのが「股旅社中」の取り組みです。

「股旅社中」から誕生した名品を解説します!

「股旅社中」がデザインを手がけた“ほかの作品も気になってきた!”という方のために、名品とも言えるダイニングチェア<limone>や、やさしい鉄の椅子<felice>、くつろげる座椅子<zagaku>について解説していきます。

<limone(リモーネ)>

<limone(リモーネ)>は、北海道旭川市にある工房・インテリアNASUでつくられているダイニングチェア。横から見たときのデザインが特徴的で、脚から背にかけてほんの少しだけアームが前に出ており、座ったときにちょこんと肘をかけられます。また、脚やアーム、背もたれの部分などに、小さな工房ならではの、木工の細やかでていねいな仕事が施されています。村澤氏曰く「丸いダイニングテーブルとの相性がいい」とのこと。

村澤一晃氏本人による解説動画はこちら

作品名の<limone>は、“レモン”という意味。非常に軽く、小さなアームが持ち手にもなって持ち運びにも便利な椅子です。実は、スタッキングも可能。村澤氏は「座っていただいて、いろいろ感じていただければ」と語っています。

<felice(フェリーチェ)>

続いて<felice(フェリーチェ)>について。「felice」は岐阜県にある鉄の専門家集団・杉山製作所と手がけたチェアです。村澤氏と鉄職人が試行錯誤を重ね、10型もの試作品をつくってたどり着いた究極の一脚と言われています。鉄を曲げる、つなぐ、塗る、というそれぞれのよさを最大限に引き出し、「細身で軽いデザイン」を心がけたそう。

村澤氏は<felice>をつくるまで木製家具のデザインをメインとしていました。しかし、鉄のプロ集団との出会いにより木製の椅子では表現し得ない、新たなたたずまいに挑戦。鉄という硬く冷たい印象のある素材を使って、身体を包み込むような柔らかなフォルムを実現しました。使い手がちょっと幸せ(= felice)を感じる家具。それが、feliceチェアです。

<zagaku(座楽)>

最後に解説するのは座椅子シリーズとしてスタートした<zagaku(座楽)>。ソファを中心として開発をしている園田椅子製作所とタッグを組んで完成させたものです。“座ることの楽しさをデザインした”という<zagaku>のオリジナルモデル「01」は、座布団と座椅子のいいとこ取りの形。ダイニングでスッと座るチェアとも、リビングのふかふかのソファとも異なる<zagaku>は、自分流のくつろぎ方を見つけて座る、暮らしの中に楽しみが増える座椅子です。

「01」のほかにも、スツールタイプの「02」、カウンターにぴったりなハイチェアの「03」、畳リビングにもマッチするローソファ「08」など、多彩なシリーズが展開されています。

村澤一晃氏本人による解説動画はこちら

暮らしを彩り、もっと豊かにするストーリーのある家具を。

村澤氏がデザインを手がける家具は、確かな技術力に裏打ちされたストーリーがあります。そして、その逸品はオリジナリティにあふれている――。

家具はあなたの暮らしの一部です。毎日、ふとした瞬間に美しいデザインが目に入ったり、毎回、使うときに心地よさを感じたり。きっと経年とともに、より愛着が深まっていくことでしょう。暮らしを彩り、もっと豊かにするストーリーのある家具を、あなたの家に迎えてみませんか?

キッチンのベストは何畳なのか!? キッチンの特徴や種類から導きます

おうちの間取りの絶対的3要素と言えば、LDK。リビング・ダイニング・キッチンですね。今回はそのなかでもK=キッチンのお話です。

近年の主流はLDKが一体化した空間。そして多くの方が希望されるのは「広々としたリビング」です。では、そうなるとキッチンには何畳必要なのでしょうか。

ひと口にキッチンと言ってもさまざまな種類がありますし、住まう方によって理想のキッチンはそれぞれ異なるもの。気になるキッチンの特徴も合わせてご紹介します!

キッチンでは広さの単位「畳(じょう)」は参考にならないって本当?

例えば、よく耳にする「4.5畳」も、その広さはまちまち。まずは種類ごとに比較してみましょう。

ひと言で「畳」と言っても、実はその規格(サイズ)には種類があって広さもさまざまなんです。しかも地域によって異なる傾向もあります。ご存知でしたか?

畳の規格とその大きさ比較

▽短手方向×長手方向(mm)
・京間(955×1910)
・中京間(910×1820)
・江戸間(870×1740)
・公団間(850×1700)
・メーター(1000×2000)

次に、それぞれを面積でみていきます。

4.5畳の場合の面積比較

・京間(8.20㎡)
・中京間(7.45㎡)
・江戸間(6.95㎡)
・公団間(6.5㎡)
・メーター(9.00㎡)

6帖の場合の面積比較

・京間(10.94㎡)
・中京間(9.93㎡)
・江戸間(9.27㎡)
・公団間(8.67㎡)
・メーター(12.00㎡)

ね?ぜんぜん違うんです。家づくりの打ち合わせ中に「キッチンは広々6畳です!」なんて言われたら要注意。その規格を必ず確かめましょう。

この記事では、ごく一般的な規格である中京間(910×1820)でお話を進めていきます。ちなみに、建築業界では「畳」は「帖」と表記するのが一般的。ここからは「帖」と表記していきますので、よろしくお願いします!

キッチンの広さは何帖が一般的? 目安は何帖?

キッチンに必要な広さは、キッチンセットの種類やレイアウトのパターンにもよりますが、標準的には4.5帖と言われています。理由は一般的な対面キッチンのサイズに合わせると、幅3.3m×奥行2.1mが必要になり、それにともなって4.5帖が目安になるからです。

なお、当社が手がける家の平均的なキッチンの広さは、5帖。毎日使うキッチンは、使い勝手がよくて気分よく料理ができる空間にしたいですよね。

では、次にキッチンの種類ごとの特徴と必要な帖数をご紹介します。

壁付けキッチンのメリット・デメリットは? 必要な帖数は?

壁付けキッチンとは、壁に向かって料理をするタイプのキッチンのこと。正面が壁についているので壁付けキッチンと言われています。ほかの言い方では、背面キッチンと呼ばれることも。

壁付けキッチンのメリットは、空間を無駄なく活用できる点。部屋の端に位置するため、デッドスペースができにくく、その分リビングやダイニングを広くすることが可能です。壁に向かって調理するので、集中して黙々と作業したい人にも最適なキッチンです。

デメリットは、キッチンが丸見えになってしまうという点です。いつでもキレイにしておけたらいいのでしょうが、そうもいかないのが生活ですよね。また、リビングにいる家族と対話がしにくい、調理中に子どもたちに目が届きにくいというのもデメリットですね。ほかにも、キッチンのすぐうしろにダイニングテーブルやキッチンワゴン以外の物を置きにくいというのも、人によってはデメリットに感じられるかもしれません。

やはりキッチンも、使う人の性格や家族のライフスタイルに合わせて選ぶ必要がありますね。

壁付けキッチンに必要な帖数は、3帖~です。小さなお家や、キッチン空間にあまり重きをおかない人に向いているのが壁付けキッチンと言えるでしょう。

対面キッチンのメリット・デメリットは? 必要な帖数は?

対面キッチンは、キッチンに立ったときにリビングやダイニングを見渡せるつくりになっています。キッチンで料理をしながらリビングにいる家族の様子が見られたり、テレビを見ながら調理をしたりすることもできます。

冷蔵庫や食器棚などが背面に配置されるのが対面キッチン。料理をしているときも振り向けばそこに必要なものがある状態になるので、移動距離が少なく、楽に作業が進められるのがメリットです。また、対面キッチンの間取りは、ある程度キッチンが隠れるつくりになっているので、リビングやダイニングからの目線があまり気になりません。

デメリットはと言えば、LDKの中でどうしてもキッチンのみが独立した空間に見えてしまう点。吊り戸棚などで天井も仕切られてしまうため、キッチン専用の照明も必要になります。LDKに広々とした一体感を求める方には不向きなキッチンですね。

必要な帖数は平均的なキッチンの広さ、4.5帖が目安です。対面キッチンは壁から中央に寄った位置にキッチン本体が設置され、あわせてカウンターもつくられることが多いので、壁付けキッチンよりはどうしても広いスペースを必要とします。

アイランドキッチンのメリット・デメリットは? 必要な帖数は?

対面キッチンのひとつであるアイランドキッチン。島=アイランドが語源で、調理スペースやシンクなどが島のように独立しているタイプのキッチンを意味します。

なんと言ってもそのメリットは開放感があるところ。リビングやダイニングまで視野が広がりますし、家族とのコミュニケーションも図りやすいのがメリットでしょう。また、キッチンの左右にも空間があるため、複数人で料理をしても作業動線や立ち位置を確保しやすいのも強みです。

来客の多い家や、ホームパーティーを開きたい家族に最適なのがアイランドキッチン。スタイリッシュなイメージもおしゃれな家を望む方に人気です。

ただし、アイランドキッチンは広いスペースが必要になるのがデメリット。余裕のある空間づくりを目指すなら設計段階から工夫しなければなりませんね。

レイアウトにもよりますが、アイランドキッチンを設置する場合は、両サイドに通路をつくる都合などもあり、5帖以上が広さの目安になります。

II型キッチンのメリット・デメリットは? 必要な帖数は?

I型キッチンとは、シンクとコンロのキャビネットが並列しているキッチンのことで、セパレート型キッチンと呼ばれることもあります。

メリットは、作業動線が短く、作業スペースが広く、収納スペースが多い点です。シンクとコンロの移動がくるっと振り向く程度でOKなので、キッチンでの作業動線が短くなるほか、冷蔵庫の配置によっては、ワークトライアングルをつくりやすいというメリットも。

また、II型キッチンはふたつのキャビネットがあるため、作業スペースが広くとれて調理が効率的にできます。複数人だったり、子どもと一緒だったり、みんなで料理を楽しみたい人に向いているキッチンです。ふたつのキャビネットにはそれぞれに収納スペースを設けることが可能なので、ほかのキッチンタイプよりも収納を多めに確保することができます。

しかし、洗った食器や食材など濡れたものをシンクからコンロ台へ移動させるときに、床に水がぽたぽた垂れやすいのが難点です。ふたつのキャビネットは収納スペースが増えるものの、当然広い空間を必要とします。短い動線はメリットですが、くるくると身体の向きを変える動きが多くなるので、集中して作業したい人にはデメリットに感じられるかもしれませんね。

II型キッチンに必要な広さは、4.5帖以上が目安。キャビネットの間が通路にもなるため、通路幅が使い勝手の決め手になります。一般的に通路幅は80cm以上必要だと言われていますが、120cmほどあれば、人と人がすれ違える余裕が生まれます。

L型キッチンのメリット・デメリットは? 必要な帖数は?

キャビネットがアルファベットのL字型に配置されているキッチンのことを、L型キッチンと言います。コンロとシンクが90度で向かい合うように設置されるのが標準的なL型キッチンです。

L型キッチンは壁付けキッチン、対面キッチンのどちらでも設置可能なので、導入を検討しやすいことから人気です。メリットはII型キッチンと同じで、ふたつのキャビネットがあるので作業スペースが広いという点。調理の作業効率がアップして、複数人での料理もらくらく楽しめます。

また、コンロとシンク、冷蔵庫の3点から三角形のワークトライアングルを短く設計することも。ワークトライアングルは、正三角形に近づくほど作業動線がよくなります。

L型キッチンのデメリットにあげられるのは、90度の角の部分がデッドスペースになりやすい点。コーナーは収納スペースとしても使い勝手がよくありません。また、スタンダードな壁付けキッチンよりも予算が高くなりがちなうえ、広いキッチン空間が必要になるところもデメリットでしょう。

L型キッチンを設置するなら、広さの目安は4.5帖以上。特に、対面式のL型キッチンにする場合は、リビングやダイニングに面しているキャビネットの間口の広さに余裕をもつことがポイントになってきます。

あなたの暮らしにベストなキッチンはズバリどのタイプ!?

さまざまなキッチンの種類をご紹介しましたが、気になるキッチンは見つかりましたか? この記事でご紹介したキッチンの形状はあくまでも一例です。実際には土地の広さや立地条件、キッチン以外の間取り、そのほかいろいろな要望などがありますよね。

そして、それらが絡み合いながらもベストなキッチンを導き出していく、という作業が必要になります。それは一朝一夕で得た知識では、簡単に答えが出せるものではありません。

「それじゃあこの記事を読んだ意味がないじゃないか!」というお声が聞こえてきそうですね。はい、大丈夫です。キッチンの基本情報を知ったうえで、最終的には依頼される工務店やハウスメーカーの設計士さんにご相談ください。

設計士さんは家づくりのプロ。あなたの要望をきちんとお伝えして、ベストなキッチンの回答をいただきましょう。そのとき、このブログなどで得た知識が必ず役に立ちます。じっくり打ち合わせを重ねて、ぜひあなたに最適なキッチンを手に入れてくださいね。

今さら聞けない住宅ローン控除とすまい給付金の関係性。コロナ禍でどう変わった?

マイホームの購入をお考えの方に、ぜひチェックしていただきたいのが「住宅ローン控除」と「すまい給付金」の制度。消費増税による住宅購入の負担軽減を目的としたものですが、「このふたつはどう関係するの?」「正直、全然よくわからない!」という声をよく耳にします。

さらに、コロナ禍の影響で「住宅ローン控除」の制度自体にも変化があって……さあ、どうしたものか!そんな方こそあらためて内容を確認してみてください。お得に家づくりを進めましょう。

「住宅ローン控除」と「すまい給付金」は、なにがどう違うの?

さて、まずは「住宅ローン控除」と「すまい給付金」について、それぞれどのような制度なのか解説するところからスタートしましょう。

住宅ローン控除とは?

「住宅借入金等特別控除」、「住宅ローン減税」とも呼ばれる制度で、一定の期間に年末の時点の住宅ローン残高に応じて、一定の割合の金額が“所得税”や“住民税”から控除される税制優遇制度のこと。

ちなみに控除とは、差し引いてくれる、という意味ですね(この控除という言葉がまず難しい!)。そして、この対象になるのが2021年12月31日までに住宅ローンを組んでマイホームを購入した場合。年末のローン残高の1%(最大で40万円)が、なんと10年間、税額控除されるんです。つまり、合計で最大400万円の減税になる可能性があります。これは絶対に手続きしたいところですね。

加えて、消費税率10%が適用される住宅を購入し、2021年12月31日までに入居した場合、控除期間が3年延長されます。

「すまい給付金」とは?

2014年4月から始まった、消費税率が引き上げられたことによる、住宅取得への金額負担を緩和するために、給付金が支給される制度のこと。

こちらも2021年12月31日までに引き渡し、入居が完了した住宅を対象として実施されています。「住宅ローン控除」と「すまい給付金」には、それぞれ利用条件が設定されていて、それらをクリアすれば、

このふたつの制度は併用することも可能です。

「住宅ローン控除」と「すまい給付金」で受け取ることができる金額は?計算方法をご紹介!

「住宅ローン控除」と「すまい給付金」の制度について解説してきましたが、では実際に気になるのは受け取りが可能な金額ですね。その計算方法についてご紹介します。

住宅ローン控除の計算は?

控除額の計算は、住宅ローンの年末時の残高に「控除率1%」を乗じることで算出できます。つまり、【住宅ローン年末残高×控除率1%】という式になりますね。

例えば、年末の住宅ローン残高が3000万円の場合には、1%が控除されるので30万円までが控除可能というわけです。控除が可能な額は、ローン残高と最大控除額のいずれかの小さいほうの額が適用されるため、この場合は30万円が適用になります。(年末のローン残高が5000万円だった場合は、1%の50万円になりますが、最大控除額は40万円ですので、40万円が住宅ローン控除の可能額に)

一方、「すまい給付金」はそれほどハードルの高い給付金ではありませんが、収入によって給付基礎額が決定するのが特徴です。

例えば、扶養者がひとりと仮定した場合、下記の通りの金額に。

※扶養者がひとりの場合

なお、収入の確認方法としては市町村が発行する、課税証明書に記載される都道府県民税の所得割額で確認できます。ですので、収入と都道府県民税も関係してきますし、都道府県民税は扶養者の人数や年齢などによっても変わってきますので、書面できちんと確認しておきたいところです。

「すまい給付金」の計算方法はと言うと、【給付額=給付基礎額×持分割合】です。

持分割合とは、住宅の名義を誰がどれくらいの割合で所有しているかを示す言葉。夫婦で住宅を購入する場合は、それぞれの頭金や住宅ローンの負担額に応じて割合を決めて登記する、というのが一般的です。

そのため、夫婦でペアローンなどの住宅ローンを組んでいる場合は、夫と妻のそれぞれが給付金の申請をすることが可能なんです。どのように住宅ローンを組むか、家族で事前によく話し合っておきたいところですね。

「住宅ローン控除」と「すまい給付金」、実際いくらもらえるのかシミュレーションしてみましょう。

住宅ローン控除とすまい給付金の計算方法がわかったところで、実際にシミュレーションしてみませんか?

「住宅ローン控除」と「すまい給付金」のシミュレーションはこちら

http://sumai-kyufu.jp/simulation/

コロナ禍で「住宅ローン控除」が増額!? 特例措置とは?

新型コロナウイルス感染症の影響で、「住宅ローン控除」にも変化がありました。政府の対策で、特例措置が取られるようになったのです。

2019年に、これまで「住宅ローン控除」を受けられる期間が10年間だったのが、期限つきの特例として13年間へ延長されました。そして、その13年間の「住宅ローン控除」の適用条件が2020年12月31日までに入居する、という要件がありました。

ですが、コロナ禍で資材の調達が難しくなったり、住宅工事の遅れが発生したりすることが目立ち、2020年末までに入居するのが事実上困難になった方々が増えてしまいました。そこで、その期限が2021年12月31日までに一年延長されたというわけです。

なお、注文住宅を新築する場合、2020年9月末までに契約できれば、この特例措置の対象となります。

分譲住宅や既存の住宅を購入する場合や、増改築などを行う場合には2020年11月末までの契約が特例措置の対象に含まれます。

制度を賢く利用して、素敵なマイホームを手に入れよう!

条件を満たせば数十万円という還付金を受け取ることができる、ふたつの制度「住宅ローン控除」と「すまい給付金」。急激な生活の変化を体験し、新しい生活様式を求められ、より自分らしい暮らしや生き方について考えた人も少なくないでしょう。

そんな今だからこそ、還付金をあきらめかけていた設備購入や、庭の植栽を増やすなど、「豊かな暮らし」づくりに生かしてはいかがでしょう?

還付金をそのままローン返済に当てるのも一つの手ですが、そのほうがより満足度の高い家づくりができるかもしれませんね。

※本記事は2020.7.12時点の内容です。社会情勢により制度が変更になることもあります。
※ここでは分かりやすい例でご説明しています。実際には細かい条件もありますので、詳細は国土交通省や、検討中の工務店にご確認ください。

令和時代に選びたい4種のエアコン!あなたに最適なのはどれ?

暑い夏、寒い冬に活躍してくれるエアコン。ひとくちにエアコンと言っても種類や設置方法が多様化しているのをご存知ですか? 

家を新築するにあたって空調計画は電気代に直結します。しかも初期投資にもお金がかかるので、住み始めたあとで気軽に買い替えられるものではありません。そこで、新築検討中の方必読の「読んで得する!」エアコン4種について解説します。

令和時代のエアコンはこの4種類! それぞれの特徴をご紹介

毎年新製品が発表されるエアコンですが、今回ご紹介するのは各メーカーのおすすめ製品ではなく、エアコンの種類について。種類や使用方法、コストパフォーマンス、施工にあたっての注意点など、大手ハウスメーカーでも教えてくれないエアコンのことをお話しましょう。

部屋ごとに設置できる「個別エアコン」のメリットとデメリット

いま賃貸マンションや戸建てにお住いの方のほとんどが「個別エアコン」を使用されているのではないでしょうか? 個別エアコンとは、ひと部屋ごとに壁掛けタイプのエアコンを設置する一般的な方法のこと。

最大のメリットは、各部屋を好みの温度に設定できることです。いくら同じ家族とはいえ、暑がりの人もいれば寒がりの人もいますから、部屋ごとに最適な温度に調節できるのは快適ですよね。

デメリットはトイレや廊下、脱衣室など部屋以外のスペースが暑かったり、寒かったりする点。

部屋から廊下に出たら急に、モワッと蒸し暑くて一気に汗が出たり、冬場に脱衣室でガクガク震えながら着替えたり

したことがある人も少なくないでしょう。また、個別エアコンは部屋数分の室内機と室外機が必要になるので、見栄えの問題や室外機を置くスペースの問題、音の問題などもあります(室外機がお隣と近くて騒音トラブルに発展!などという話もあります)。エアコンの数が多いと、掃除の手間もその分多くなりますね。

暖房効果抜群の「床下エアコン」のメリットとデメリット

生活感溢れる写真ですみません……弊社スタッフの自宅です。

床下エアコンとは、通常の壁掛けタイプのエアコンを

頭上ではなく、床下付近に設置すること。

主に暖房使用時に効果を発揮する方法です。

床下エアコンは、床下に暖気を送り込んで、床下から家全体を暖房することができるんです。つまり、全部屋をエアコン一台のみで暖房できるということ。

そのため、冬に足が氷のように冷えたり、トイレの寒さにドン引きしたりすることがなくなります。もう、これは冷え性の味方ですね。それから、床下に暖気を送るので、エアコンの風が直接人にあたらないのも◎。

自然の風に吹かれるのは心地いいものですが、エアコンの風って直に当たると妙に不快感がありますよね。でも床下エアコンならそれがないんです。

しかし、デメリットもあります。それはエアコンをつけっぱなしにするので、家の規模や性能にもよりますが、正直なところ電気代が心配。それから、効果的に利用するためには、

間取りの選択肢があまりありません。

(基本的に、真四角の二階建ての吹き抜け付きのおうちでないと効果がイマイチ…)。

さらに、夏場の冷房にはあまり効果がない、という残念な情報もお伝えしておきます。まあ、温かい空気は自然と上昇しますが、冷気は上がっていかないので仕方ないですね。さらに、夏場に床下エアコンを使用すると、基礎が結露してカビが発生する原因にもなりかねません。

ですので、夏場の対策は、別で行うというのがベターでしょう。例えば、「小屋裏エアコン」という方法。小屋裏にエアコンを設置して、夏場、冷気を家全体に広げる方法で、床下エアコンの反対のやり方ですね。そうすると冬は床下から、夏は小屋裏からと2台のエアコンで1年の空調を快適にまかなうことができます。

床下エアコンの進化版!?「階間エアコン」のメリットとデメリット

階間と書いて“かいかん”と読みます。階間エアコンは、実は床下エアコンの進化版とも言われている方法なんです。どういったものかと言うと、

2階の床と1階の天井の間に、エアコンの風を流し込む方法

…なのですが、イメージしにくいと思うので、この図をご覧ください。

まず、1階天井と2階床の間には、配線や配管が通っていたり、梁が渡っていたりする空間があります。そこ(階間)にエアコンの風を送り込んで、ここから家全体に冷気や暖気を届ける、というのが階間エアコンのシステムです。

メリットは、低コストで全館空調が実現できる点。全館空調システムよりメンテナンスコストもお手ごろです。また、床下エアコンと違って冷房効果も期待できます!

しかしながら、送風用のファンの風圧が高いので、人によっては冷暖房の風が直接体に当たったときに不快に感じるかもしれません。あとは床下エアコン同様、効果的に利用するためには間取りに制限があります(当然ですが、平屋には設置できません)。

新しい空調方式のため、いまのところ対応できる工務店が少なく、

工務店選びが難航する

可能もあります。さらに言うと、実績が少ないため、例えば階間の断熱の欠損や補強不足でカビが発生するなどの想定外の不具合が出てくることも考えられます。 

究極の快適性!しかし……「全館空調」のメリットとデメリット

全館空調は家全体の温度を調整するシステム。これまでご紹介した3つは、一般的なエアコンを使用した「方法」でしたが、全館空調は専用の設備を導入する「システム」です。

メリットは、家の中のすべてが快適温度だというところ。

トイレも廊下も洗面所も、24時間365日、一定の温度が保たれる。

この世のパラダイスです。ノンストレス!そもそも、前述の床下エアコンも階間エアコンも、この全館空調をローコストで実現するために生まれた方法なんです。なので

・エアコンの不快な風が当たらない
・間取りも自由
・エアコン1台のみで室内も室外もスッキリ

といいことづくめ。

ですが、大きなデメリットがありまして……。それは導入費用が高額であること。メーカーにもよりますが、100~200万円はかかります。となると各部屋にエアコンを1台ずつ設置するより高くなりますし、故障時にかかる費用も心配です。メーカーでしか修理の対応ができない場合も多く、それは修理費も高額になるってものです。

全館空調のポイントは動画でも短めに解説しています↓↓

エアコン4種の初期費用とランニングコストを解説!

4種類のエアコンをご紹介したところで、気になるのは費用面ですよね。夏も冬も快適で、設置費用もランニングコストも格安!というものがあればベストですが、そうは問屋が卸さない…。

ということで、自分の暮らし、ライフスタイルに最適なバランスのいいものをセレクトするのがベターですね。では、それぞれの初期費用とランニングコストについて解説していきましょう!

一軒に平均3~5台設置する「個別エアコン」の初期費用とランニングコスト

個別エアコンの設置にかかる費用と言えば、エアコン本体。6~10畳用の場合、1台10~15万円が相場でしょうか。それに部屋数を掛けたものが初期費用。

LDK、寝室、和室、子ども部屋で約40万

というところでしょうか。

これにランニングコストが加わります。新築の場合、現在のお住いより気密性・断熱性が向上することを前提としても、部屋数や家の面積も増えることが多いので、電気代が劇的に安くなる!とは言えないでしょう。

小屋裏エアコンとセットで考える「床下エアコン」の初期費用とランニングコスト

床下エアコンを設置する場合は、小屋裏エアコンとセットで考えます。家全体をカバーするため、本体2台で30万円前後はかかるでしょう。さらに、床下と小屋裏への設置費用(意匠も含む)で10万円前後。もちろん詳細な金額は依頼する会社によりますが、

おおよそ初期投資で40万円ほど。

そして、ランニングコストは1台のエアコンを24時間つけっぱなしにしますので、家の性能や大きさ、環境によって異なりますが、1万円台後半~数万円といったところですね。

工務店探しが大変!?「階間エアコン」の初期費用とランニングコスト

階間エアコンは、使用する本体は1台なので、10~15万円。専用のファンの設置や断熱工事で20万円ほどかかります。ということで、

初期投資は30~35万円くらいです。

ランニングコストは床下エアコンと同様です。ですが、階間エアコンについては、まだまだ施工してくれる工務店が少ないのがネックです。

機種の性能による「全館空調」の初期費用とランニングコスト

全館空調はシステム全体とすべての部屋への配管が必要になり、それが諸々含めて

100~200万円くらいかかります。

一番安くできたとしても、ほかの空調よりも初期投資は高額ですね。

ですが、ランニングコストは逆に1万円台~なので、ほかのエアコンとあまり差がありません。春や秋の過ごしやすい時期は、システム自体を止めることもできるので、ランニングコストの不安は思ったよりもないかもしれませんね。

もちろん機種によって性能が異なり、ひと昔前は全館空調と言えば高額でした。ところが、いまは慎重に機種選びをすれば、ランニングコストは普通のエアコンと同じくらいと考えていいでしょう。

エアコンを選ぶ前に、知っておきたい家の性能のお話

ここまでエアコンの効果と費用について、お話してきました。実はここまでのお話は、「家の性能」が高気密高断熱住宅の基準を満たしていることが前提。裏を返せば

「家の性能が悪ければ、どんなエアコンを選んでも一緒!」

ということなんです。

つまり、家全体を過ごしやすい室温にできて、なおかつコストパフォーマンスに優れたエアコンの活用には、高気密高断熱住宅を建てることが大前提にあります。ここで高気密・高断熱住宅のおさらいをしておきましょう。

まず、気密性について。

気密性の高い、低いとは、外部との隙間が少ないか、多いか

ということです。ここで言う隙間とは、本来、空いていてはいけない場所に空いている無駄な隙間のこと。ですので、窓やドアなどは除外されます。

隙間が少なければ、エアコンの暖気や冷気が外へ逃げにくくなり、外からの熱気や冷気が入って来にくくなります。つまり、気密性が高いとエアコンの効果が高まる、ということになるんです。

次に断熱性について。断熱性とは、文字通り

“熱を断つ性能”

です。断熱性は家の外壁や屋根の内側に断熱材を施工したり、窓を複層ガラスにしたりして高めるものです。気密性の場合は空気の出入りを少なくしてエアコンの効果を高めますが、断熱性の場合は外からの熱気・冷気を中に“伝えない”&中の快適な温度を外に“逃さない”ようにして快適性を保ちます。

断熱材については種類が多いので、ここでの説明は割愛しますが、ポイントは断熱材の性能ではなく、その断熱材に合わせてしっかりと施工がなされるかどうか。

高気密・高断熱の考え方は比較的新しいものなので、施工業者によってリテラシー(理解)に差があります。残念ながら、高断熱住宅を謳っていながら、断熱材の特性を理解できていない施工で断熱効果が得られない、というハウスメーカーや工務店もあります。

気密断熱がしっかりしている工務店の見分け方

そんなときの見分け方は、まず真夏や真冬に見学に行くこと。実際に体感してみてください。エアコンがゴーゴーうなりをあげていたら、ちょっとやばいです(笑)

「全館空調」や「エアコン1台で快適に」と掲げているハウスメーカーや工務店もあります。こういう会社は気密・断熱の基準をクリアしていて、その先の話をしているということなので、当たりの可能性が高い。

もちろん、そうは言っても当たりはずれはありますので、担当者にあれこれ質問をしてみてください。説明がしどろもどろならば、その会社で家を建てるのはちょっとキケンですね。

家の性能は、見た目ではわからない部分です。設計する側の知識や、施工者の腕とリテラシーが大きく関わってきます。マズいハウスメーカー・工務店を選ばないように、家を建てる側も正しい知識を備えておきましょう。

いかがでしたか?

現代エアコンの基礎知識と気密・断熱のお話でした。

どの方式の空調にもメリットもデメリットもありますが、あなたにとって最適な空調が見つかりますように!

究極の座り心地のソファは「フェザー」?「ウレタン」?造作ソファならすべてを叶える!?

ソファは空間のイメージを大きく左右する大物家具のひとつ。とくにリビングでの過ごしやすさ、快適性にも関わってくるので、家族のライフスタイルにぴったりのものを選びたいところです。

ソファというと、まずはデザインやカラー、素材(張り地)、サイズなどに目が行きがちですが、座り心地が決まるのは構造。実は内部構造でソファの価格に違いが出ることも多いんです。

さらに注目したいのが、ソファの座面の衝撃吸収の役割を果たす、クッション材。フェザーやウレタンなどの種類や質によって座り心地はもちろん、耐久性も大きく異なります。人気の無印良品でもフェザータイプのソファと、ウレタンタイプのソファが発売されていますが、どちらも好評の模様。今回は、ソファの素材をテーマにブログを展開いたします!

ソファの座面に使用されているクッション材には、どんな種類があるの?

ソファの座面の内部は、コイルスプリングやバネの上を衝撃吸収材としてクッション材が覆っています。(部位によって使い分けられていることも)。座面に使用されている主なクッション材「フェザー」と「ウレタン」についてご紹介します。

◎フェザー

フェザーは水鳥の羽根。高級な素材としても知られています。保温性が高く、軽いのが特徴。ふわっとした柔らかな座り心地で、包み込まれているような感覚になります。ソファの本場・イタリアのトップブランドなどではフェザーのクッションソファが主流ということもあり、その流れが日本にも浸透してきたと言われています。

◎ウレタン

ウレタンとは、ポリウレタンという合成樹脂の略称。主にソファに使われているのは、発泡剤を混ぜて発泡させたウレタンフォームの塊を適切な大きさにカットした“カットウレタン”です。ウレタンは、密度が高いほうがヘタッとなりにくいものですが、密度が高く重いウレタンのみを使用すると硬さを感じて座り心地が劣ります。

そのため、表面には耐久性が高く柔らかいウレタン、その下に軽いウレタン、さらにその下に密度の高い重いウレタンを重ねるなど、密度の異なるウレタンを組み合わせるのが一般的です。

ほかにも、チップウレタンやシリコンファイルなども主な素材に挙げられますが、それはまたの機会に。次にソファの素材選びのポイントや注意点をご紹介します!

「フェザー」or「ウレタン」、ソファの素材選びのポイントはどこ?

座ったときにじわりとクッションが沈んで体が包み込まれて、なんだか安心感があるのがフェザーのソファ。一方、ウレタンのソファは座ったときは硬めの印象ながら、長時間座っても疲れにくく、どんな姿勢でも安定があります。では、どんな優先順位で素材を選ぶのが良いのでしょう?

ズバリ!「座るときの姿勢と時間」です。

柔らかい座面のフェザーは、短時間座る人に向いています。ふかふかだと姿勢は崩れやすいですが、短い時間だったらそのときどきで楽な姿勢になりますよね。また、素材が柔らかいと型崩れが気になりますが、短時間の使用なら影響が少ないというのもポイントです。

逆に、硬めの座面のウレタンはというと、長時間座る人に適しています。長く座っても姿勢が崩れにくく、総合的に体への負担が少ないのも特長です。硬めの座面なので型崩れもしにくいので、長時間座る人に向いていると言えるでしょう。

あなたは一日に、週に、どのくらいソファに座りますか?どんなシーンでソファを利用しますか?

例えば、「仕事を終えて家に帰ったときに、しばらくソファに座って休憩したい」、「夜にソファに座って映画鑑賞をする」、「休日にソファで一日中ゴロゴロしたい!」、「ゲストが来たときに、ソファに腰かけて少しあらたまって会話をする」など、具体的な使用シーンをイメージしてみてください。

そうすると、実際に座ったときの姿勢や、どのくらいの時間ソファに座るのかなどがわかり、使い道に適したソファ選びが叶えられます。

ふかふかな座り心地のフェザーソファ。メリットとデメリットは?

水鳥の羽根であるフェザーは、軽くて保温性が高く、座ったりときにしっとりと体を包み込んでくれます。このふかふかとしたリッチな座り心地こそ最大のメリットと言えるでしょう。

加えて、手のひらでパンパンと軽く叩いて空気を含ませると、簡単に形が復元できるのもポイント。偏りがある場合も、少しもみほぐすような感じで叩けば、整えることができます。湿発散性に富んでいてムレにくく、弾性回復率がいいのでへたりにくい素材とも言えるでしょう。

だだし、長く使うことでどうしても弾力が失われたり、潰れてきたりしてしまうことも。その場合、ソファによっては羽毛布団のような打ち直しも可能です。

低品質のフェザーを使用しているソファでは、羽軸の翼の硬い部分を使っているものもあり、背もたれにもたれるとガサガサと音がしたり、羽軸が当たっている感覚がしたりするものもあるので要注意!

では、次にウレタンのメリットとデメリットはどのようなものか、チェックしてみましょう!

長時間座っても疲れにくいウレタンソファ。メリットとデメリットは?

フェザーソファに比べて硬さのあるウレタンソファは、長時間座っても疲れにくいのがメリット。とはいえ、ひとくちにウレタンと言っても、一般的なウレタンフォームから、ソフトタッチウレタン、低反発ウレタン、チップウレタンなど多数あります。

多くのソファのクッションには、特徴の異なる複数のウレタンを組み合わせていて、ソファの座り心地に変化をつけています。

やわらかなウレタンはソファの表面近くの層に使用されることが多く、価格も安価ですが、へたりやすいのがウィークポイントです。硬いウレタンになると型崩れもしにくく、へたりにくいのですが、比較的高価。低反発ウレタンは反発力がとても小さく、体圧を全体に分散させるため体への負担が少ないのが特長ですが、非常に高価です。

そして、もうひとつご紹介しておきたいウレタンが、モールドウレタン。こちらのメリットとデメリットもぜひ確認してみてください。

他に類を見ない座り心地と言われるモールドウレタンソファ。メリットとデメリットは?

モールドウレタンとは、金型や鋳型に入れて発泡成型したウレタンフォームの一種。流し込んだウレタン液が型に合わせて発泡して成型されるため、ほかのウレタンフォームよりも複雑なデザインの製品でも再現性が高く、設計通りのクッションが実現できます。また、密度が高く耐久性があり、さまざまな部材との一体成型も可能です。

実際に触ってみると、とても滑らかな質感。かつ、しっかりと身体を受け止めてくれそうな弾力を感じます。

ただし、金型や鋳型の製作にコストがかかるため、簡単に使用することができないのがデメリット。モールドウレタンソファは高い品質であるとともに、とてもハイコストな製品になります。

一生モノのソファとして、モールドウレタンのソファにも一度は挑戦してみたいですね。

フェザーとウレタン、モービルウレタンのメリットとデメリットについて簡単にご紹介しましたが、実はこれらの素材を組み合わせられるソファがあるんです。それは

造作ソファ(オリジナルソファ)

最後に、造作ソファについて、ぜひチェックしてください!

新築するなら造作ソファ?フェザーとウレタンを組み合わせて極上の座り心地を実現!

体をふんわり包み込んでくれるフェザーと、姿勢をしっかりと安定させてくれるウレタン。これらを組み合わせた究極のソファが、造作なら可能です。

なにが究極かというと、あなたのライフスタイルにぴったりの、形、サイズ、クッションの硬さ、張地の素材、収納付きなどがすべて叶えられるからなんです。

例えば、背もたれは背中の当たり具合と首の楽さに影響しますが、硬さも高さも、角度も、造作ソファなら自由自在。

背もたれは柔らかいほうがリラックスできるので、リラックスを重視する場合はフェザーをたっぷり使用してふんわりと。読書をする時間が長い人なら内部にウレタンを使って姿勢が整う、やや硬め仕上げに、といった具合。

背もたれの角度も一般的には110度くらいが使いやすいと言われていますが、ソファに座って仕事や読書などをしたい人には105度くらいがほどよく、使い勝手がいいのです。これらの用途に合わせたソファが手に入れられるのも、造作ソファならではのメリット。

さらに、座り心地を左右する座面。フェザーのみだと柔らかすぎる……。そんなときは、フェザーとウレタンを組み合わせた「やや柔らかめ+ほどよい弾力や沈み込み」といった組み合わせも可能です。

造作ソファに力を入れている工務店ならサンプルを持っていることもありますので、実際に腰掛けて、座り心地を確かめてみるのがおすすめ。

そのときは数秒だけ腰掛けるのではなく、目をつぶって1分ほどじっくり座ってみてくださいね。じんわり身体になじませて、好みを確かめましょう。

造作ソファに関するご質問で多いのが

(金額が)高いんですよね?

というもの。これは、サイズ・素材、つくり手によりピンキリなのでなんとも……なのですが、長く愛用できる高品質なソファを別途買い求めることを考えれば「ほぼ同等」と言えると思います。

「ほぼ同等」で、自分好みの座り心地やサイズを追求したオリジナルが手に入るのであれば、選択肢の一つに加える価値はあるのではないでしょうか?

あなたの暮らしに最適なソファ、とっておきのお気に入りのソファ、ぜひ見つけてくださいね。

L字型の平屋住宅のメリット・デメリット! どんな間取り? 活用法も知りたい!

コンパクトで快適な暮らしを叶える住空間かつ、プライベートガーデンがあって自然と一体感があるなど、平屋住宅のなかでもいま注目されているのが「L字型の平屋」。

平屋の基本形には「L字型」以外にも、「I字型・コの字型・ロの字型・連棟型」などがありますが、今回は「L字型の平屋」のメリット・デメリット、間取りの有効な活用法などをご紹介します。さて、L字型の平屋に向いている人はどのような人でしょうか。

L字型の平屋ってどんなお家?

L字型の平屋とは、お庭をアルファベットの「L字型」の建物で囲んだ形の平屋のお家のこと。

L字型の住宅は、その形だけで外観から一般的な住宅とはちょっと違った雰囲気になったり、一部の壁を大きな窓にするとたちまち開放感が出たり、見た目の印象を大胆に演出できます。それから周辺環境にもよりますが、

周りの目がダイレクトに届かないプライベート感のある中庭をつくることも可能です。

とくに、近年コンパクトで暮らしやすいお家を求める方々に人気の平屋なら、キッチンとダイニング、お庭につながりや広がりが感じられる空間や、ウッドデッキなどで半屋外空間をつくりやすいのもポイント! ワンフロアだからこそ家族同士のコミュニケーションが図りやすく、一体感のある家づくりを実現できます。

L字型の平屋の形が分かる動画はこちら

「普通とはちょっと違ったお家がいい」と考えている人なら外観のデザインにこだわるのも◎。アイデア次第で、斬新な建築になるのがL字型の平屋の魅力と言えますね。

続いて、L字型住宅のメリットについてご紹介しましょう。

L字型住宅のメリットとは?

・変形地でも柔軟に対応できる

L字型住宅の最大のメリットは、変形地にも対応しやすい点です。変形地とは、例えば三角形だったり、道路に接している出入り口の部分が細長くて、その奥にまとまった敷地がある形状の旗竿地(はたざおち)だったり…。こういった土地に正方形や長方形の建物を建てようとすると、土地を有効に活用するのが難しいのですが、L字型住宅なら頂角に向かって長辺を伸ばすことで、土地を最大限に活用できる可能性が高まります。

・プライベート空間を取りやすい

一般的な平屋の場合、プライベートな空間を分けにくいとされていますが、L字型住宅にするとLの字の縦と横のエリア別に空間をわけられるのもポイント!縦のエリアに寝室や書斎などのプライベートな空間、横のエリアにリビングやダイニング、キッチンなどの人が集まるスーペスと、ゾーン分けしやすいのがL字型住宅の特長と言えます。

こういった特長からお家にゲスト訪れることが多い人ほど、L字型住宅がおすすめ。急な来客の際にも、掃除や片付けが効率的にできます! 友人や親戚を招いてホームパーティを楽しみたいなら、L字型のお家はメリットがいっぱいです。

また、後述の「上手な間取りの活用法」でも触れますが、

L字型住宅なら“お家自体を目隠し”に利用して、プライベートガーデンを設けることができます。

つまり、敷地に接する道路沿いにお庭を持ってくるのではなく、道路からは家の外観が見えるようにして、お家の“内側”に中庭をつくる、ということ。

ただし、建ぺい率(敷地面積に対する建築面積の割合)などの理由で、L字型の住宅を建てることが難しい場合もあるので要注意!

L字型住宅のデメリットとは?

・間取りの自由度が低い

L字型住宅のデメリットは、部屋の間取りの自由度が低いところ。通常、部屋の間取りを決めるときには、それぞれの家族構成やライフスタイルに合わせて部屋数や、部屋の広さを決定します。しかしながら、L字型住宅の間取りは“廊下などの動線”を確保すると部屋の大きさ、配置などがかなり限定されてしまいます。

とはいえ、

最近はなるべく廊下をつくらず、スペースを有効活用した間取りがトレンド。

実際、廊下以外の方法で空間を仕切る、家族の居場所を確保する設計上の工夫はたくさんあります。ここは、あなたが依頼する設計者の腕次第、というところでしょうか。

「自由度が低い=デメリット」と考えるか否かはその人次第かもしれませんね。

・メンテナンスコストが高くなる!?

それよりもチェックしておきたいのは、完成後のメンテナンスコストが高くなる可能性がある点。一般的に複雑な形の建築ほど、メンテナンスコストは上がります。とくに角にあたる入隅の部分は弱くなりがちなので、補強をすることで強度を補う必要も。

また、L字型住宅は四角いシンプルなお家に比べると凹凸が多く、建築コストも高くなる傾向があります。さらに、凹凸の多いL字型住宅は、大きな地震が発生した際に一カ所にエネルギーが集中してしまうリスクも。設計時に耐震性に関して特別な配慮が必要になります。

地震の多い日本では、大きな地震が発生するたびに耐震基準が見直され、現在の建物は1981年以降に採用された新耐震基準に合わせられています。この基準は震度6程度の地震にも耐えられるようになっていますが、耐震性については万全を期しておきたいですね。

L字型住宅の上手な間取りの活用法

さまざまなメリット・デメリットのあるL字型住宅。では、代表的な間取りの活用法とはどのようなものでしょうか。

・開放感のある中庭を手に入れよう

もっとも一般的なのが、中庭をつくること。「中庭のあるお家がいい!」という思いからL字型住宅を選ぶ方もいるほどです。L字型の平屋では、コの字型の平屋よりも広い中庭を設けることが可能。敷地内においての建物の場所や、周辺の環境にもよりますが、ほどよく外からの視線を遮りながら、開放感のある広々とした中庭が叶えられます。

また、中庭があると室内と屋外、それぞれの空間の距離が近くなるので、屋外の空間が暮らしになじみやすいのも魅力。

子どもがいる家族だったら、中庭を遊び場にしても室内からも目が届きやすくて安心です。

それからテーブルやイスを用意して、休日にブランチをしたり、バーベキューをしたりするのも楽しみ方のひとつ。

プライベートガーデンをセカンドリビングとして上手に活用する

ことで、室内の間取りの自由度が低くて部屋数を増やせないというデメリットも克服できます。

視点をガラリと変えれば、中庭をつくることで自然と一体化した一家の団らんの場をキープしつつ、そのかわりにリビングをややコンパクトにして、必要に応じて部屋数を増やすこともできますね。

・ビルドインガレージで駐車スペースを確保

中庭のほかにも活用法としてイチオシなのが、

スキップフロアを組み合わせてビルドインガレージををつくること。

限られた土地にお家を建てるため、駐車場がつくれない場合もあります。

そういうときは、L字型住宅の内側部分を駐車スペースとして有効に活用することも可能です。車庫をつくることで土地を最大限に活用し、さらに車庫上にスキップフロアで居住空間を確保することもできます。スキップフロアなら、プライベート空間を確保しにくいという平屋のデメリットもカバーできますね。

まとめ・L字型の平屋に向いている人とは?

最後に、どのような人がL字型の平屋での暮らしに向いているか考えてみました。

お家の中央に中庭をつくることができるL字型住宅は、風通しがよく、室内に明るい光をたっぷりと取り込んだ気持ちのいい空間になります。プライベートガーデンによって、2階建て住宅よりさらに自然が身近に感じられるのもL字型の平屋ならではの特長です。

ガーデニングをしたり、屋外の空間を自由に楽しんだりしたい人にこそ、L字型住宅の平屋がおすすめ!

平屋の場合は、水平移動の空間だからこそ生活動線がコンパクトになったり、ワンフロアだからこそ家族間のコミュニケーションが濃密になったり、快適性と幸せな暮らしが同時に叶えられるお家と言えるでしょう。効率的なミニマムな暮らしと、家族同士の関わりが深い暮らし。一見相反するようなふたつの暮らしを求める、ちょっと欲張りな人にこそ、平屋のL字型住宅が向いているかもしれません。

いかがでしたか?今回ご紹介した内容が、あなたにぴったりなL字型の平屋づくりの参考になれば幸いです。

インナーガレージとは?実例まじえてメリット&デメリットを解説します。

※約400邸の実績。一級建築士のいる工務店「ベガハウス」のブログです。

間取りのご要望を聞かせていただくと、高確率で出てくるご要望!それは「車を降りて雨に濡れずに玄関まで行きたい!」です。梅雨時期は特に、車までの少しの距離がおっくうだったり、傘をさす手間が面倒だったり。買い物袋がたくさんあるときも大変ですよね。

ということで今回は、そんなご要望を一発解消する「インナーガレージ」のメリット&デメリットを解説します。おまけで、「車を愛する人のためのインナーガレージ考察」もお楽しみください。

インナーガレージとは?

車を格納するためのスペースを、住宅の一部に組み込んだガレージのことです。「ビルドインガレージ」という言い方のほうが、しっくりくる方も多いかも知れませんね。

シャッターやドアをつけて、車庫のような空間にする場合もあります。車だけでなく自転車やバイク、ベビーカーなどもしまえるので、ご家族で色々な使い方ができそうですね。

インナーガレージの5つのメリット

  • 雨に濡れずに玄関まで行くことができる!
  • 車が汚れるのを防げる!(鹿児島など火山灰がふる地域、黄砂に悩まされている方にもおすすめ)
  • 倉庫と組み合わせると一石二鳥!収納力UP!
  • カーポートの役割を兼ねるので、住宅の外観を損なわない!(カーポートのデザインが好きじゃない……という方におすすめ)
  • 車を動かせば、日差しが強い日・雨の日の遊び場に変身!バーベキューなども楽しめます。

インナーガレージのデメリット

  • 建物本体の坪数の中に駐車スペース分が追加されるので、建物本体の金額がUPする。※カーポート代はいらなくなります
  • 建物の面積が増えるので、固定資産税が増える。
  • 建築面積(建物の外壁や柱の中心線で囲まれた部分)が増えるので、建ぺい率(敷地に対してのおうちの面積)が増えます。

※デメリットに関しては、建築の専門的な部分に関係している上に、支払う金額にも絡むので、実際に依頼をする住宅会社にご相談いただくのをおすすめします。

いろいろなインナーガレージのご紹介

30坪の敷地に建つおうち。車2台分のガレージ。桜島を臨む眺望のよい土地ですので、2階リビングです。

中庭のある平屋のおうち。ガレージ内の暗さを和らげるために屋根に開口を設けて空からの光を入れています。

狭小地に建つスキップフロアの3階建てのおうち。玄関アプローチの隣に1台分を確保しました。外収納とつながり出し入れがしやすいです。

スキップフロアと中庭のある高天井の平屋のおうち。玄関出たらすぐにガレージ2台分。こちらも外収納とつながって外のものを出し入れしやすい。

角地にたつL字型の2階建てのおうち。中庭とつながる場所に1台分を確保しました。軒下を通って玄関へ。

インナーガレージ以外の雨対策

「雨に濡れずに玄関へ行ける」ようにする方法はほかにもあります!軒(のき)を長く出したり、敷地次第では通り抜けることができる「車寄せ」という考え方もありますね。

写真のおうちは平坦な角地でしたので、土地のカドから入って軒の下に停め、そのまま前進で出発できるように設計しています。ちょうど、ホテルのロータリーみたいな感じですね。

車を愛する人のためのインナーガレージ考察

さて、ここからは少しディープなお話になります。車を愛する弊社スタッフに聞いた、「車好き目線のインナーガレージ」です。すでに車を愛しちゃっている方には「分かる!」というお話。

「次の車は大事に乗りたいな」という方にとってもタメになるお話ですよ。

紫外線・火山灰のダメージから大事な愛車を守る

日本中、いや世界中にくまなく放射されている紫外線。乙女の肌の天敵は、実は車の天敵でもあるんです!車体の塗膜にジワジワとダメージを与え続け、新車のときは鮮やかだったボディが、いつしか色あせ、くすんでしまう……。

紫外線量は南に行くほど多くなるので、南国の方ほど注意が必要です。

南国と言えば、鹿児島の方は桜島の火山灰にも要注意!火山灰は細かな粒状の鉱物。硫黄成分なども含んでいます。雨に流されず付着した火山灰は、塗膜表面のクリア層を侵食してしまいます。黄砂も同様に鉱物なので、細かな傷の原因になります。

住宅の壁と天井で囲まれたガレージなら、上からも横からも紫外線と火山灰・黄砂を防いでくれます。

天気を気にせずメンテナンスができる

オイル交換したり、ウィンドウォッシャー液を補充したり、あれこれいじったり。車好きなら、やりたいことがいろいろあります。でも、そんな時に必ず晴れるとは限りません。

ビルトインガレージの床面は、外に向かって水が流れるように勾配をつけてあるので、多少の雨でも気にせず作業ができます。

好きな時に洗車ができる

「今日はいい天気だからクルマでも洗おうかな」

……これ、残念ながらあまりオススメできません。

よく晴れた日に、日光を浴びた車体は思っている以上に高温になっています。屋外で洗車している最中に、ボディ表面の洗剤が乾いてしまったり、洗剤を洗い流したあと、拭き取る前に乾いてしまったことはありませんか?

……それが水染み、水アカの原因。特に濃色車で目立ちがちです。

それを防ぐためには、まだ陽が高く登る前に洗車を終わらせてしまうか、曇りの日を狙って洗うか。かと言って「今日洗いたい!」という時もありますよね。

少し広めのビルトインガレージに水栓を設けておけば、晴れの日でも日射を気にせず洗車ができます。さらに雨の日でも、翌日のドライブに備えて洗車しておく、なんてこともできます。

住まいをつくるなら、愛車にもガレージを。車好きとしては叶えたい夢の一つです。

まとめ

というわけで、「インナーガレージ」の特徴を解説させていただきました。ざっくりまとめると

  • 雨の日のお出かけ・お買い物に便利!
  • 車の汚れや、劣化を防いでくれるし、メンテナンスも楽になる!
  • 外収納と組み合わせれば、収納力も格段にUP!

そのかわり

  • 建物本体の建築費や固定資産税も上がるので、そこは依頼する住宅会社にご相談を!

というところでした。

ご参考になれば幸いです。
ではでは。

子供2人の間取りは「子供部屋をつくらないこと」。基本から解説します

間取りで悩まない人はいません。この記事を開いたあなたも、その1人でしょう。もっと言えば、子供が2人いる、または将来的に2人子供がほしいと思っている!違いますか?

……タイトルに「子供2人」って入ってますからね 笑。そんな状況の方が多いと思います。ここでは「子供2人の4人家族」をモデルにして「間取りの考え方」をお話します。

1番長く家にいるのは誰ですか?

まず最初にお話したいのがこれです。「家の主役は誰か?」とも言えます。当然、子どもではありません。なぜか?子どもはいずれ、家を出るからです。当のあなただって、家を出なければ「家を建てたい」とは思わなかったはずです。

多くの人にとって、マイホームはいずれ「終の棲家」となります。自分の老後を想像してください。そのときに、階段だらけの家はどうでしょう?開かずの間だらけの家は?とても住みづらいですよね?

1番長く家にいるのは、家の主役は、他ならぬあなた方ご夫婦です。間取りを考えるとき、どうしても「幼い子どもがいる今」を中心に考えてしまいがちです。ですが、大切なのは「長い間住み続ける」ことを念頭に置くこと。

すると、あなたのご家族にとっての「理想の間取り」が浮かび上がってきます。

「子ども部屋」はつくらない。

「子ども部屋」を例に、さらにお話していきます。

弊社代表・大迫の自宅の場合、子ども部屋は4帖×2部屋です。普通に考えると「小さくない?」と思われますよね。ご自身が子どもだった頃を思うと、そう感じるかと思います。

でも、大迫の子育て体験談を聞くと、「4帖で十分かも」と思えてきます。例えば子ども部屋を“実際に個室として”使い始めた時期について。現在中学3年生の長女さんが、子ども部屋で勉強を初めたのは2年前。つまり中学1年生のときです。

それまでは、というと、小学4年生まではおもちゃ部屋。その後ようやくベッドを置くようになり、中学1年生で“個室”として機能しはじめた、と。そうなるとですよ?大学入学を機に家を出てしまったら、子ども部屋の使用期間は6年間ということです。

夫婦で50年近く住む家の、たったの6年間です。割合で言ったら12%です。とっても短いですね。そんな短い期間のために、6帖×2部屋の立派な“子ども部屋”、つくりますか?

あなたの実家を思い出してください。自分の部屋、今はどうなっていますか?物置になってませんか?子どもが巣立った後の子ども部屋ほど、無駄なスペースはないんですよね……。

「そうはいっても、小学生から勉強はするでしょ?宿題はどこでするの?」

はい、では大迫家ではどうだったかというと、宿題はリビング・ダイニングでしていたそうです。そのほうが、分からないところは親に聞けるし、親としても、子どもが目の届くところにいてくれるしで、双方にとって都合がいいんですね。

「友だちが遊びに来たときは?」

それも同様ですね。リビング・ダイニング。外遊びが好きな友だちなら、玄関ポーチや庭で過ごすこともあったそうです。ちなみに、読書は階段でしていたそうです。居心地良かったんでしょうね 笑。少し分かる気がします。僕は、読書はもっぱらトイレでしてました 笑。

使わない部屋は「防犯」にも「健康」にも良くない

少し別の側面からも見てみましょう。子どもが巣立った後の子ども部屋について。先ほども「物置になりがち」という話をしました。実は「物置状態になった部屋」は「防犯」にも「健康」にも良くないんです。

Q.物置になくて、子ども部屋にあるもの、なんでしょう?

それは「窓」です。ほとんど人の出入りがない場所に「窓」がある。これは、泥棒の侵入経路をわざわざ用意してあげてるようなもの。

Q.物置に増えてくるものといえば何でしょう?

それは「ダンボール」です。ダンボールは湿気を吸収しやすいため、梅雨時期などはカビの温床になります。さらに、キングオブ害虫「G先輩」の餌にもなります。

つまり、使わない部屋があることは、家にとってデメリットだらけなんです。

「子ども部屋」、としても使える部屋をつくろう。

さて、「子ども部屋は小さくていい」、「使わない部屋は危険」、この2点についてはご理解いただけたでしょうか?では、どんな子ども部屋にしたらいいのか?という部分についてお話します。

結論から言うと「子ども部屋はいらない」です。

「子ども部屋にもなる部屋」をつくろう、ということです。子ども部屋として活躍するのは正味6年間です。それ以外の期間は、別の用途でも使えるようにしておくと、「物置化」が防げます。

近年定番となっているのが、8~9帖の部屋をひとつ設けて、子どもが個室を希望するタイミングで二つにセパレートする方法。セパレートの仕方も様々で、壁を増設するもよし、本棚や二段ベットなど大型家具で仕切る方法もあります。

弊社のお施主様でも、高校生から中学生までの3兄妹が、ひと部屋をカーテンで仕切っている例があります。子どもたちからは特に不満も聞こえてこないということですよ。

子ども部屋の将来を考えよう

そして、「子ども部屋にもなる部屋」の活用法です。特に考えたいのは、子どもが家を出た後です。子どもが小さいうちは、おもちゃを置いたりプレイルームとして使うことが多いと思います。

子どもが巣立った後、使い方は自由、人それぞれです。少し例を挙げると、人を招くのが好きな方はセカンドリビングや客間に、趣味の時間を大切にされたい方は書斎にしてもいいですね。映画鑑賞がお好きならシアタールームに。また、夫婦それぞれの寝室として活用される方も多いようです。

「子どもの思い出がなくなるのはちょっと……」

という方は、部屋の一部に飾り棚を設けて、そこにお子様との思い出の品を並べておくといいですよ。

子ども2人の4人家族に必要な坪数は?

次に、気になる「坪数」と「間取り」についてお話します。「坪数」とはつまり、

「子供2人の4人家族に必要な坪数」

ということです。延床面積で、目安は

「24坪」

くらいかな、と思います。「……小さくない?」と思われるかも知れませんね。もちろん、それ以上の大きさでつくっても構いません。ですが、小さく建てると、それによって得られるメリットがあります。

(1)掃除。

まずは掃除。それまで賃貸に住んでいた方が新築を建てる場合、たいてい部屋の数が増えたり、もしくは部屋のサイズが大きくなります。するとどうなるか?掃除の手間も増えるんです。

「使いやすい間取りや家事動線を考えて建ててもらったけど、広くなったから掃除にかける時間は引っ越す前とあまり変わらない」

そんな相談を受けることもあります。

(2)エアコン効率。

家の体積が大きくなればなるほど、エアコンの効きは悪くなりますし、電気代もかかります。省エネの面から見ても、「小さく建てる」がいいのです。

(3)家を小さくすることで庭の楽しみが広がる。

家自体を小さくすると、50坪程度のあまり広くない土地でも、庭を楽しむ余裕が生まれます。四季折々で変化のある日本の気候風土。季節ごとに表情を変える庭の草木を眺める時間は、日々の生活に“ゆとり”を与えてくれます。

「住宅街を考えているから庭は……」

そう考えている方には「中庭」をおすすめします。外部からの視線を遮断した、プライベートな庭です。

住宅業界には

「外に閉じ、内に開く」

という言葉があります。住宅密集地で、大きな窓や庭を外に向けて取れない場合の設計手法です。中の様子が分からないよう、外に向けては塀や外壁で目隠しをします。そのかわり中庭を設けて、陽の光や風をたっぷりと家の中へ取り込むのです。

「小さく」建てても「大きく」暮らせる間取りの工夫

「……そうは言っても24坪は小さい気がする。」

そう思います?

出展:総務省統計局
https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2008/nihon/2_4.html

上の図は「総務省統計局」が出している「一戸建て1住宅の規模」を示したデータです。これを見ると、昭和63年の延床面積が89.29㎡(約27坪)、平成5年が91.92㎡(約27.8坪)ですから、これを読んでるあなたのご実家も、この数値に近いかも知れませんね。そうなると、確かに「24坪」は3~4坪ほど小さいです。

では、ぜひご両親に聞いてみてください。「今の家で不便なところない?」と。そうすれば

「2階に上がるのがしんどい」

「あなたの部屋には、もう何年も入っていない」

「1階だけで暮らせる家にすればよかった」

みたいな声が聞けるはず。これみんな、家が大きいために生まれる不便ですよね。将来のことまで見据えると、家は小さいくらいがちょうどいい。つまりは、「24坪」は多くの場合、「ジャストサイズ」ということです。

大丈夫ですよ。「小さく」建てても「大きく」暮らせる間取りの工夫というものが、あります。少しご紹介しますね。

リビングに隣接する和室は「兼ねる」の基本

家を「小さく」収めるには、いろいろな間取りの工夫が必要です。基本は、部屋の役割を「兼ねる」こと。その代表例が、リビングに和室を隣接させることです。

リビング隣接の和室は様々な用途を兼ねます。日中は子どもの遊び場やおもちゃ部屋。乳幼児でもゴロンとさせられるのは畳のメリットですよね。夜は寝室。来客時には客間にも使えます。

なんと1間3役!おすすめの間取りです。

造作家具を活用してスッキリ収納を目指す

「小さく建てる」には収納計画も大切。そこで考えたいのが造作家具です。造作とはつまり「作り付け」ということ。収納するものを計画段階で洗い出し、それがしっかり収まる量の収納を作り付けで用意しておくのです。

収納量があいまいのまま家を建ててしまうと、物が入り切らなかったとき、後付けで収納ボックスなどを買い足すことになります。すると、収納ボックスの分だけ部屋が狭くなります。ひとつならいいですが、それが2個3個と増えていったら?あっという間に、物に侵略されてしまいます。

なので、「収納計画からの造作家具」です。自分で収納量を洗い出すのは大変ですので、一緒に考えてくれる工務店やハウスメーカーを選ぶことをおすすめします。冷蔵庫、洗濯機などの家電、洋服、書籍は当然。学校の教科書、ランドセル、ひな飾り、仏壇など将来的に増えるものまで見越して(提案して)くれるところだと安心ですね。

天井高にメリハリをつける

坪数を小さくするということは、「空間を横に広げることに限界がある」ということです。でも、縦方向には?2階建てなら「吹き抜け」を設けることで、小さくても開放感を出すことができます。平屋でも「高天井」にすることで「吹き抜け」と同じ効果が得られます。

ここで、“できる”設計者なら、さらに工夫します。廊下の天井高を、あえて低くするんです。そうすることで、リビング・ダイニングに抜けたときに、さらなる開放感を感じることができます。

山道でトンネルを抜けて、パッと視界がひらけるあの感覚です。こうした視覚効果も利用することで、小さいけど大きく暮らす家を実現します。

まとめ

「子ども2人の4人家族の間取り」についてまとめましょう。

  • 家の主役はあなた方ご夫婦です。子どもではありません。
  • 子ども部屋が物置になると、泥棒の侵入経路になったり、カビの温床になったりして危険です。
  • 子ども部屋が実際に稼働するのは、たったの6年間。なので、「子ども部屋」ではなく「子ども部屋にも使える部屋」を作りましょう。
  • 子ども部屋の将来を考えましょう。セカンドリビング、趣味の部屋、寝室など、夫婦の生活を豊かにする使いみちを、建てる前から考えておきましょう。
  • 子ども2人の4人家族の間取りで必要な坪数は24坪(延床面積)
  • 家を小さくすることはメリットも多い。(1)掃除がらく(2)省エネ(3)庭を広く取れる
  • 家を小さくするには「兼ねる」設計がキモ。リビングに隣接した和室は使い勝手がいい。
  • 収納計画をしっかりと立て、造作家具を活用しよう。既成品の家具に頼ると、収納は増えていくばかり……。
  • 天井高にメリハリを付けて、縦方向の開放感を利用しよう。

というわけで、「子ども2人の4人家族」の場合の「間取りの考え方」のお話でした。1番のポイントは、家での暮らしを「長期的スパンで考える」ということです。

家づくりの「動機」は育児かも知れませんが、「目的」はもっと先まで見越したほうが、のちのち後悔しないですむかと思います。

とはいえ「そんなこと考える時間ないよ!」という方も多いと思います。そんなときは、気になる工務店・ハウスメーカーに駆け込んでください。代わりに考えてくれます 笑。

「親身になって考えてくれない、信用できない」という担当者や営業さんに当たったら、人を代えてもらうか、別の会社も検討してくださいね。そのまま話を進めると、後悔する確率が高くなりますよー。

【天狼院から転載】家づくりは「完成」が「はじまり」。設計士が時限爆弾を仕込む理由

*この記事は、「天狼院書店」に掲載された記事を転載したものです。


新築の新居に引っ越してはじめての買い物はコンビニ弁当だった。
それも昼飯でなく、夜ごはんである。

「新居初日の夜は豪勢にスキヤキ、食後にケーキで家族団らんじゃないの?」

いやいや。
大量の荷物を運び込み、キッチンや風呂など設備の説明を受け、電気屋、水道屋の手続きをし、手伝ってくれた友人たちを送り出したら日がもう暮れている。

「ただ空腹が満たればいい」という思いで、最後の気力を振り絞ってコンビニに身体を引きずっていった。……今となっては良い経験。マイホームは“夢”ばかりでないことを悟った日である。

どうして“新築初夜”のことを思い出したのか?それは、この記事を書いている今が12月1日、日曜日だから。

「全然分からない」

という声が聞こえてきそうなのでもう少し説明させてもらうと、私は工務店に勤めていて、毎月第1日曜日は“アフター定期訪問”の日になっている。つまり“夢”だったマイホームを建て、“現実の暮らし”を営むお施主さんと会える日。そんなお施主さんと会うと、半ば強制的に自分の家のことを思い出してしまうのである。

私が勤めているのは鹿児島にある小さな工務店。施工実績は鹿児島全域に370棟ほど。その全てを8カ月に1度のペースで訪問している。8カ月に1度。このペース、間違いなく業界随一である。一般的なハウスメーカーのアフター定期訪問は、3カ月、6カ月、1年目、3年目、5年目、10年目の計6回。対して弊社は10年間で15回、2倍以上の頻度だ。

この頻度、もはや親戚。

お施主さん側も慣れたものだ。快く家の中を見せてくれるし、些細な相談ごとでも気を使わずに話してくれる。中にはハンドドリップのコーヒーを入れてくれたり、手づくりのお菓子を振る舞ってくれる人も。今日だって「お昼まだでしょ?」と旦那さんが中華鍋を振るい、手づくりチャーハンをご馳走してくれた。

こんなにもアフター定期訪問に力を入れるのは、“住まないと分からないこと”が、どうしても出てくるからだ。当然だけど、家を建てるまでに何度も何度も打ち合わせを重ねる。最初のヒアリングから着工まで10数回の打ち合わせ。着工してからも現場で確認ごとがあったりと、お施主さんと顔を合わせる機会が減ることはない。

それでも、“家”は住んでからが本番である。

私が、新築初夜にコンビニ弁当を食べるなんて思ってもみなかったように、住んでみると「思ってたのと違う」ことが出てくるのだ。そこに素早く、定期的に寄り添い、“暮らし”が豊かになるサポートを行う。それが工務店の指名だと考えている。

アフター定期訪問で行うことは多岐にわたる。単なる補修・修理だけでなく、何に困っているかをヒアリングして、その解決方法を伝える。例えば木製品の手入れ。

褪せたテーブルに艶を取り戻すには?
しつこい黒カビを取り除くには?
ふすまの滑りを良くするためには?

実践を交えながらレクチャーする。

一銭にもならないことに、なぜ力を入れるのか? そう思う人もいるかも知れない。実は我々にも3つのメリットがある。

ひとつは、お施主さんの“安全”を管理できること。我々とお施主さんとの間には、先程触れたように親戚のような関係性が築かれている。「困ったことがあったら、とりあえず我々に連絡」という習慣ができている。すると、怪しいリフォーム業者に引っかかることがない。荒い補修工事によって美観を損ねることもない。家でのトラブルは、すべて信頼の置ける業者が対応する。

二つ目は、家の経年変化をつぶさに観察できることだ。木の外壁は年数を重ねるとシルバーグレーに変化する。真鍮の取っ手は、手で触れるところから鈍く輝き出す。その変化は地域、天候、日当たり、立地などにより微妙に異なる。直に観察することで、これから建てる家の設計にフィードバックしていく。

三つ目は、“親戚のような付き合い”そのもの。売り手と買い手の枠を超え、暮らしのパートナーとして認識してもらう。お子さまが生まれたら抱かせてもらい、祝福する。庭のもみじが紅葉したら、それを眺めながらお茶を飲む。そんな日常を共有させてもらい、我々は“ものづくりの原点”を再確認する。

「完成からはじまる家づくり」が弊社の理念だ。

ある打ち合わせにて、社長はこう話していた。
「家には時限爆弾が仕掛けてあるんです。住んですぐには気づかないけれど、あるときふっと、設計の工夫に気づく」

例えば玄関。靴を履くところの近くに、細い丸棒の柱を立てておく。その横には、膝くらいの低い位置に棚を。子どもは柱を掴んでぐるぐる回ったり、登ったりして遊ぶ。棚は歳時の飾りをしつらえる飾り棚に。

子どもが巣立った頃、柱と棚は役割が変わっている。棚は、靴を履くときの一時的な腰掛けに。柱は、靴を履いて立ち上がるときの手すりに。

「『あれって、そういう意味だったんですね!』って笑顔で言ってもらえたら、設計士冥利に尽きますよね」

12月1日、日曜日。

そんなわけで我々は、今日も鹿児島中を走り回る。お施主さんの笑顔に会いに行くために。