旅する家具デザイナー・村澤一晃氏はどんな人? プロフィールから代表作までまるっと解説します。

新たに注文住宅を建てたり、建売住宅を購入したり。新築に住むことを想像したとき、せっかくなら「こだわりの家具に新調したい!」と思いませんか?しかし、ひとくちに「こだわりの家具」と言っても、“家と調和して、家族のライフスタイルに最適で、使い勝手がよく、ストーリーが感じられる素敵な家具ってどうすれば出合えるの?”という人も多いのでは?

そこでご紹介したいのが家具デザイナーの村澤一晃氏。彼の代名詞とも言えるのが「股旅社中」という取り組みです。「股旅社中」では全国各地の職人さんと、その土地ならではの素材を使ってオリジナルの家具を制作しています。今回の記事は、そんな村澤氏のプロフィールから、これまでの活動、代表作などをまるっとまとめてお届けします!

家具デザイナー・村澤一晃氏のプロフィールをご紹介!

一体どのようにして家具デザイナーになるのか、それを生業とするに至るまでにはどのような道のりなのか、いまいちピンと来ませんよね? それでは村澤一晃氏のプロフィールをご紹介しましょう。

<村澤一晃氏プロフィール>

1965年、東京生まれ。家具やインテリア、建築のデザインや製作、施工技術を学べるデザイン専門学校・ICSカレッジオブアーツを卒業。垂見健三デザイン事務所を経て、1989年イタリアに留学する。1990年よりミラノにあるセルジオ・カラトローニデザイン建築事務所に勤務。家具のデザインのほか、インテリアデザインや展示会場の構成を手がけていた。

1994年、ムラサワデザインを開設。「現場での開発」を開発理念とし、また、「デザインは生活や行動のすべての中にある」を信条としてデスクで図面を描くのがデザインではないことを実践。国内外の工場を歩き回り、道を歩くときや飛行機で移動するとき、稼働する工場を見つめるとき、誰かとする会話の中などからデザインを紡ぎ出し、地域の特性を活かした家具の開発を中心に活動している。

村澤一晃氏のものづくりとは? 代表作「pepe」とはどんな作品?

pepe サイドチェア(スタッフ私物)

村澤氏のデザインの手法は一貫しています。デザインで求める目標やテーマを、関係する人々で共有。そして現場で手を動かして、現場でデザインを一緒に検証しながら目指すデザインを紡ぎ出していく、という手法です。村澤氏はそれを「ワークショップ方式のデザイン開発」と呼んでいます。

村澤氏の代表作と言えば、アームチェア<pepe(ペペ)>。2004年11月に発表され、2005年にはグッドデザイン賞を受賞した作品でもあります。<pepe>はイタリア語で“コショウ”という意味。

椅子の足先は丸い断面、アーム部分は丸四角、さらに背の先端部分になると再び丸になるというアームの形状にピリッとスパイスの効いた作品です。背もたれの部分はアーチ状になっており、もちろん座り心地も抜群。木材やファブリックをセレクトすることもできます。

村澤一晃氏が取り組む「股旅社中」とは?

村澤氏の代名詞とも言えるのが「股旅社中」というプロジェクト。工務店や住まいに関するメーカーが協働し、新しい家づくりに取り組む活動をしています。

家に住まう人と建築空間の接点となる家具や建具、さまざまな建築部品。これらについて既製品や従来の手法で満足できるものがなかった場合、“じゃあ、オリジナルの製品を開発しよう!”という前向きなデザイン実践活動を行うのが「股旅社中」です。

「股旅社中」が目指すのは、手触りのいい家、住めば住むほど心地よくなる家、隅々までていねいにデザインする家。生涯に渡ってきめ細かなアフターメンテナンスを手がける工務店ならではの家づくりの、さらなるレベルアップをともに探求しています。

また、これまでにないものを求めて、同じ志をもつ仲間と互いに研鑽し合いながら交流を深めており、開発力の向上、時間とコストの合理化、情報とノウハウの共有、人材育成などもチームの活動に活かしていく、というのが「股旅社中」の取り組みです。

「股旅社中」から誕生した名品を解説します!

「股旅社中」がデザインを手がけた“ほかの作品も気になってきた!”という方のために、名品とも言えるダイニングチェア<ソスタ>や、やさしい鉄の椅子<felice>、くつろげる座椅子<zagaku>について解説していきます。

<ソスタ>

<ソスタ>は、福岡県朝倉市のシキファニチアでつくられているダイニングチェア。横から見たときのデザインが特徴的で、脚から背にかけてほんの少しだけアームが前に出ており、座ったときにちょこんと肘をかけられます。また、脚やアーム、背もたれの部分などに、小さな工房ならではの、木工の細やかでていねいな仕事が施されています。村澤氏曰く「丸いダイニングテーブルとの相性がいい」とのこと。

村澤一晃氏本人による解説動画はこちら

非常に軽く、小さなアームが持ち手にもなって持ち運びにも便利な椅子です。実は、スタッキングも可能。村澤氏は「座っていただいて、いろいろ感じていただければ」と語っています。

※リモーネは前モデルの名称です。

<felice(フェリーチェ)>

続いて<felice(フェリーチェ)>について。「felice」は岐阜県にある鉄の専門家集団・杉山製作所と手がけたチェアです。村澤氏と鉄職人が試行錯誤を重ね、10型もの試作品をつくってたどり着いた究極の一脚と言われています。鉄を曲げる、つなぐ、塗る、というそれぞれのよさを最大限に引き出し、「細身で軽いデザイン」を心がけたそう。

村澤氏は<felice>をつくるまで木製家具のデザインをメインとしていました。しかし、鉄のプロ集団との出会いにより木製の椅子では表現し得ない、新たなたたずまいに挑戦。鉄という硬く冷たい印象のある素材を使って、身体を包み込むような柔らかなフォルムを実現しました。使い手がちょっと幸せ(= felice)を感じる家具。それが、feliceチェアです。

<zagaku(座楽)>

最後に解説するのは座椅子シリーズとしてスタートした<zagaku(座楽)>。ソファを中心として開発をしている園田椅子製作所とタッグを組んで完成させたものです。“座ることの楽しさをデザインした”という<zagaku>のオリジナルモデル「01」は、座布団と座椅子のいいとこ取りの形。ダイニングでスッと座るチェアとも、リビングのふかふかのソファとも異なる<zagaku>は、自分流のくつろぎ方を見つけて座る、暮らしの中に楽しみが増える座椅子です。

「01」のほかにも、スツールタイプの「02」、カウンターにぴったりなハイチェアの「03」、畳リビングにもマッチするローソファ「08」など、多彩なシリーズが展開されています。

村澤一晃氏本人による解説動画はこちら

暮らしを彩り、もっと豊かにするストーリーのある家具を。

村澤氏がデザインを手がける家具は、確かな技術力に裏打ちされたストーリーがあります。そして、その逸品はオリジナリティにあふれている――。

家具はあなたの暮らしの一部です。毎日、ふとした瞬間に美しいデザインが目に入ったり、毎回、使うときに心地よさを感じたり。きっと経年とともに、より愛着が深まっていくことでしょう。暮らしを彩り、もっと豊かにするストーリーのある家具を、あなたの家に迎えてみませんか?

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